築45年になる実家に帰省した際、キッチンの壁に取り付けられた古い2ハンドル混合水栓から、ポタポタと水が漏れているのが気になりました。母に聞けば、もう何年も前からこの状態で、バケツを置いて凌いでいるとのことでした。業者を呼ぶほどではないが不便、という典型的な古い家の悩みを解決すべく、私はDIYでの修理を決意しました。まず直面したのは、その蛇口がどこのメーカーのどの種類なのか全くわからないという問題でした。現代のようなシングルレバーではなく、赤と青のプラスチックのキャップがついた、いかにも昭和を感じさせるデザインです。スマートフォンのカメラで接写し、ネット上の古いカタログ画像と照らし合わせた結果、かつて多くの家庭で採用されていた大手メーカーの初期モデルであることが判明しました。作業を開始するにあたって、まず屋外にある水道の元栓を閉めましたが、この元栓自体も古く、回すのにかなりの力が必要でした。古い蛇口の修理で最も注意すべきは、ネジ部分の固着です。私はモンキーレンチを手に取り、まずは水側のハンドルを外そうとしましたが、40年以上の歳月が作り出した「水垢の接着剤」は想像以上に強力でした。無理に回して配管を傷めないよう、浸透潤滑剤を吹き付けて1時間ほど置くことにしました。その間に、内部の構造を予習しました。古い蛇口の基本は「ケレップ」と呼ばれるコマ型のパッキンです。ようやくハンドルが外れ、内部のスピンドルを抜き出すと、そこには原形を留めないほどボロボロになった黒いゴムの破片がありました。これが水漏れの真犯人だったのです。新しい13ミリ規格のコマパッキンを差し込み、ついでにスピンドルのネジ部分にシリコングリスを塗布しました。古い蛇口は、こうした手入れを施すことで、まるで新品のような滑らかな操作感を取り戻します。お湯側も同様に作業を終え、元栓を開けて蛇口をひねった瞬間、あれほどしつこかった水漏れがピタリと止まりました。母の喜ぶ顔を見て、古いものを大切に使い続けることの充足感を感じました。最新のタッチレス水栓も魅力的ですが、こうした古い種類の蛇口には、構造が単純ゆえに自分の手で直せるという、現代の製品にはない「信頼関係」のようなものが存在します。今回の修理を通じて、古い蛇口の構造を一つ知ることは、家全体の仕組みを理解することに繋がるのだと実感しました。これからも実家の古い設備たちが不具合を起こすたびに、私は道具を手に取り、対話を繰り返していくことになるでしょう。
実家の古い蛇口を自分で直した記録